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第6話  

車の中で、薫はぶつぶつと話しかけてきた。

「お前んちのダンマリのことを考えてるのか?」

「いや、誰があいつなんか考えるもんか」

聡はスマートフォンを放り投げ、冷淡な声で答えた。

「お前、あんなに好きじゃないなら、ちゃんと彼女に説明すればいいのに。あの子、口もきけないし、本当に可哀想だろう」

「あいつが可哀想?」聡はネクタイを引っ張りながら、妙に苛立ちを覚えた。「何が可哀想なんだ?俺はこれまで、何不自由なくあいつを育ててきた。それなのにどうだ?結局、育ったのは自分勝手な恩知らずだ。ちょっと注意しただけで、冷戦を始めるなんて、大したもんだよ。」

「まあ、子供の頃から一緒に育ってきたんだし、恋がなくても家族愛くらいはあるだろう。電話でもかけて、少し落ち着かせたらどうだ?」

「そんな必要ない。」聡はスマートフォンを一瞥し、さらに冷たく言い放った。「誰が彼女の我がままを助長したんだ」

そうは言いながらも、しばらくしてから彼はスマートフォンを手に取り、私に一通のメッセージを送った。

内容は至ってシンプル。

「明日の夜、家に戻って夕食を食べる」

ほら、彼はこんな風に、自分が正しいと信じて疑わない態度でしか和解を求めない。私の気持ちなんて、いつも無視している。

ただ、聡はまだ知らないんだ。

もう、私の気持ちを気にする必要なんてないことを。

私は、もう何も感じられなくなっているから。

車内に「ピン」とlineの通知音が響いた。

聡は目を開け、少し奇妙に感じた。

「阿風、今、車の中でスマートフォンの音がしなかったか?」

「まさか。車にはお前と俺しかいないんだぞ。スマホの音なんかなかったよ。お前、このところ疲れすぎて幻聴でも聞こえたんじゃないか?」
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